2011年8月13日土曜日

父の葬儀帰省後記 ーその2ー


2011年08月04日(木)
午前中、89歳になる母の姉(僕の伯母)と彼女の娘(僕の従姉のYちゃん)が特養に母を訪ねてきた。父の葬儀の前、母は「姉ちゃんに会いたいよ」と言っていたが、伯母はだいぶ前から車椅子生活者で、そのため父の葬儀には参列できなかった。

伯母とは母が元気な頃(十年ほど前に帰省した際)、母と一緒に家を訪ね、長いこと話をしたことがあり、僕もそれ以来の再会であったが、言葉や表情は母よりずっとしっかりとしていた。母も伯母も身体が不自由になり、なかなか簡単に会うことができなくなっていたことから、随分久しぶりの対面となったようだ。会った瞬間に互いに手を取り合い、老姉妹の感激のご対面の体となった。

来年、伯母は90、母は88になるので、伯母の卒寿、母の米寿の祝いを、近親者を集めて同時にケアハウスのゲストルームを利用してやろうという話になった。父の米寿、卒寿を皆で祝ったように。是非、実現させたいと思う。

伯母と従姉のYちゃんと別れ、しばらくして、兄夫婦ともお別れ。僕とオクさんは、やり残した手続き関連を行うことと、せっかくだから少しは下関観光もしようということで滞在を少し延ばすことに。

午後、ケアハウスから歩いていけるフグの水揚げ港(全国のフグの8割を水揚げする)として有名な南風泊(はえどまり)市場、竹の子島という小さな島をオクさんと散策。真夏の太陽が照りつける中、ほとんど人気がなく、深い午睡の中にあるような地域を二人で歩いた。

竹の子島小観光から戻り、母に今日の別れを告げ、特養を出てバス停に向かうところで、母の部屋に帽子を忘れたことに気づき引き返し、再び戸外に出たところで、母宛の速達書留を配達して来た郵便配達人と遭遇、それは母に関する手続き上、大事な書類で、それをその場で受け取ったことで明日やるべき仕事が減った。帽子を忘れ、引き返さなかったら郵便配達人とは遭遇しなかった。これもまた父の計らいであると確信。

そもそも、このところ仕事が暇な僕は良いとして、兄も兄嫁も、僕のオクさんも、ちょうど仕事の区切りが良いときに父は亡くなった。僕にしてもアメリカに住む旧友が僕を訪ねてきて、僕の家に二泊し、旧交を温め別れた直後に父の危篤を聞かされたわけで。こんなに他者にとってグッド・タイミングを見計らった死に方もあまりないのではないか。

そして、そもそも、僕は8月始めに父を訪ね介護する予定だった。それは兄夫婦がその時期に韓国に1週間ほど旅行に行く予定があり、もし自分が日本にいないときに父に急変があれば、という不安から兄が僕に望んだことだった。

結局、兄は韓国行きの直前、父の危篤の報を受け、韓国行きをキャンセルし、父の葬儀の喪主を務めることになったが、もし、兄が韓国に行き、僕が父の許を訪れた直後に父の臨終に際したとしたら、僕は当面ひとりで葬儀に際する諸々をこなせばならず、それは大変なことだったろう。兄にしても近い韓国とは言え、国内にいるようにすぐに駆けつけることはできず、歯がゆい思いをしたことだろう。

父が「わしが死んだら、成ちゃんひとりではたいへんやろう」(あるいは、「成司ひとりでは、正直頼りない」)という心遣いをしてくれたとしか思えない。僕に対してはごく優しかった父であったが、万事信頼していたのは兄の方だったと思う。

いずれにせよ、父の臨終から葬儀にかけて、あらゆることがスムーズにいったことは、すべて父の計らい、周囲に対する心遣いであったと今さらに思う。僕は信心深くもなく、迷信深くもないが、死を目前とし、死していく人間の、遺していく者たちへの「見守りパワー」というものを感じた。ホントに「父ちゃん、ありがとね」だ。

夕刻、母宛の書類を持って、市役所支所に母関連の書類を受取りに行き、オクさんと実家へ。実家近くのスーパーで買い物。オクさんにとっては、関東ではあまり見かけないローカルな食品群が珍しいようで、「彦島豆腐」(豆腐好きのオクさんが「美味しい!」とお墨付き)、丸天(オクさん評価五つ星)、キムチ(関東のものより浅漬け風、これもオクさん五つ星)、「ひらそ」(「ひらまさ」とも、下関ではポピュラーな刺身、味はブリをやや淡泊にした感じ、安くて旨い!)の刺身、鯨カツ(普通に売ってます)等を買い込み、ビール飲みつつ、二人で実家で夕食。

実家にオクさんと二人でいると、なんだか「嫁」に来てもらったような感じがして(ま、嫁には違いないけど)、結婚35年目であるが、少し奇妙なくすぐったいような気持ちがした。そこそこ飲んでほろ酔いで就寝。よく眠れた。


画像上:互いに車椅子の母(右)と伯母の対面。母はすぐに泣き出してしまったが、伯母はにこにこと母に微笑みかけた。いくら年を取っても姉と妹の関係。
画像中:南風泊港の一隅。真夏の午後の強い陽射しの中で港は午睡のひととき、ひとっこひとり居らず、ちょっとシュールな光景だった。
画像下:竹の子島に渡る橋の上からの竹の子島風景。ずっと向こうにわずかに見える山並みは北九州。夏の陽射しにきらめく入り江は、現世を離れた涅槃の光景のようにも思えた。

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