2011年6月15日水曜日

『発達障害 母たちの奮闘記』川上未映子さんの書評



芥川賞作家にして、自称「文筆歌手」の川上未映子さんから、拙著『発達障害 母たちの奮闘記』書評(読売新聞6月12日付「本よみうり堂」欄)をいただいた。

以下に全文を掲載させていただきます。
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『発達障害 母たちの奮闘記』 山下成司著

評・川上未映子(作家)

 外見的には「普通」だし、少し関わるくらいではどこが「普通」と違うのかわかりにくい。しかし個性と言い切るにはあまりに切実な「生きにくさ」がそこには確かに存在している。

 認識されているケースや特質もそれぞれの状況と複雑に絡み合っているがゆえに、総合的な理解が遅れ——つまり発達障害者は常に幾重もの「はざま」を生きているというわけだ。

 今もって十分とは言えない発達障害についての情報や理解がさらに少なかった時代に子育てをした親御さんたちへ、著者は「根ほり葉ほり」話をきく。障害に直接かかわるエピソードに限らず、むしろそれ以外——生活と子育て全般についてまんべんなく語ってもらうことによって、発達障害をめぐる様々な問題をまるで光を丁寧にあてるようにして、本質に迫ろうとする。

 当事者は励みと勇気を受けとり、当事者でない読者もそれが社会に生きる自分たちの問題であることを知るだろう。「人を育てること。人と生きること」。差異や境遇を超えて、我々はこの大きな出来事を共有している。理解と繋がりを深めるための一冊だ。
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何度も読み返して、不覚にも涙がこぼれた。それくらい、嬉しかった。おそらく、この評を読んで日本中で一番感激したのは、筆者であるこの僕であろう。

この本で紹介した「普通」ではない子どもを持った「普通」のお母さんたちの、しかし「普通」とは言い難い、健気で懸命な子育ての物語の意味を、「それが社会に生きる自分たちの問題である」、「大きな出来事」として、読者に共有していただけることができるのならば、筆者としてこれ以上の望むべくもない。

僕たちは「人を育てること。人と生きること」の当事者だ。「差違や境遇を超えて」、僕たちが人に手を差し伸べるのは、その当事者意識に他ならない。それがシンパシーという言葉の本来の意味だろう。

「同じような悩みを持つお母さんたちの少しでも力になってあげられるのなら」と僕の「根ほり葉ほり」の不躾な質問にも、心を開いて答えてくれたお母さんたちの気持ちに報いる意味でも、川上未映子さんの評に感謝したい。

知名度の差はあれど、僕も「シンガーソング・イラストレーター」を自称している身、川上未映子さんの歌手としての活躍も期待しています。

*アップしたYouTube動画は「未映子 - 悲しみを撃つ手」

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