2009年5月10日日曜日

Dっちの歌



彼は自由の 子ども エンジェルハートの持ち主
183センチ90キロの それは大きな子ども
チェシャーキャットの微笑み いつも浮かべてたのさ
僕の頭を そっと 撫でて立ち去った

春の陽射しを浴びて タイヤ置き場で昼寝
183センチ90キロの それは巨大な猫のよう
彼の心に触れる ことは難しいが
どんな人でも きっと彼を好きになる

ウー、思い出すよ 君の微笑みを
ウー、思い出せば 僕の心に 優しい風が吹き抜けるよ
彼は自由の 子ども エンジェルハートの持ち主

さかさま言葉の達人で すぐさま言葉を裏返す
わちにんこ らなうよさ うとがりあ すましいがねおくしろよ 
彼の心の世界が 少し見えたのならば
どんな人でも 彼に微笑むだろう 

すぐにどこかに消えて はやてのように現れる
いつも君をさがしてた いつも君を待っていた
さすらい猫のきままさに ふりまわされもしたが
君を本気で叱ることはできなかった

ウー、思い出すよ 君の微笑みを
ウー、思い出せば 僕の心に 優しい風が笑いかけるよ
彼は自由の 子ども エンジェルハートの持ち主

トイレに行けば一時間 お風呂に入れば二時間
ずっと歌を歌ってた お気に入りのフォークソング
ひとりの世界に遊ぶ 君の心の庭に
少しだけ  お邪魔してもいいかな

大好きなテレビは水戸黄門 人生楽ありゃ苦もある
食べることも 大好き 幸せそうに食べるのさ
君と出会ったことを 僕の人生において
神様に感謝したい気持ちさ

ウー、思い出すよ 君の微笑みを
ウー、思い出せば 僕の心に 優しい風が吹き抜けるよ
彼は自由の 子ども エンジェルハートの持ち主
僕の頭を そっと撫でて立ち去った
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僕のかつての生徒、Dっちのことを歌にした。彼は自閉症を持っていたが、それはそれはキュートな生徒のひとりだった。

最初の歌詞の「タイヤ置き場で昼寝」というのは実際に彼がやったことで、初めての合宿のとき、合宿所の近くのガソリンスタンドで昼寝をしているところを従業員が見つけ、合宿所に苦情を言いに来たのだった。

183センチ90キロというのは掛け値なしの本当のことで、授業で身体測定をしたからよく記憶している。そんな大男なのに、ふんわりとした優しいオーラを放っていて、いつもニコニコしていてクラスの人気者だった。

急に人の目の前に立ち、ふわっと頭を撫で、さっと立ち去るようなことをするのだが、あっけに取られる人の反応を楽しんでいたようだ。通学途中の電車内で、見知らぬおばさんにそれをやり、警察に保護されたこともある。

歌にはしなかったが、やたらと立ち小便するクセがあって、通学路に自分の「マーキング・スポット」がいくつかあり、そのひとつの会社玄関の植え込みに立ち小便をしていて通報されもした。

「さかさま言葉」は本当に見事で、やや長い文でも、問いかけられると瞬時に裏返すことができた。数学も得意でウチのガッコウの生徒にはできないルート計算や、方程式もできた。

合宿でDっちがトイレや風呂に入ると延々出てこないので、毎回ドア越しに「早く出な、Dっち」と声をかけなければならなかった。「長い?」と言うので「長いよ、Dっち」と言うとしぶしぶ出てきたが。

トイレや風呂場ではエンドレスに歌を歌うことが多く、レパートリーはチューリップの「心の旅」や、かぐや姫とかの70年代フォークで、これはお母さんが好きだったからということを後から知った。

水戸黄門が大好きだったので、「〜でござった」とか、「〜しておる」とか時代がかった言葉遣いをしたが、長いセンテンスを話しかけることはなかった。しかし、文を書かせるとびっしりと強い筆圧で長文を書いた。漢字もよく知っていた。

行事などでどこかへ行くと、確信犯的にいなくなり、いつも彼を探さなければならなかったが、彼としては「鬼ごっこ」を楽しんでいたのだと思う。プロが出場するフットサルの試合に、生徒を連れていったことがあったが、観客席に彼はおらず、どこに行ったのだろうと思っていたら、プロチーム(横浜FC)の入場行進の最後尾について試合場に出てきたのにはまいった。

彼については数限りないそんな思い出がある。今思い返せば、どれも微笑まずにはいられない思い出だ。

卒業した後は神奈川の西の方の作業所に通っていたが、ここ数年連絡をしていないので、どうしているのかよくわからない。元気にやっていれば嬉しいが。

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