2008年7月8日火曜日

やれやれ×2「その7」

本日月曜日、朝一に片づけるべき用件があって、その内容はここで具体的には書けないのだけれど、別件仕事関連で「こちらに」クレーム(わりとシビアな)あり、土、日とその処理に追われていたのだった。クレームをつけるのと、つけられるのと同時に進行するような状況は、僕のそんなに短くもない人生において記憶がない。

僕はアップル・サポセンのように杓子定規の「規約馬鹿」でもないし、ごく普通のまっとうな神経の持ち主なので(たぶん)、クレームをつけた方の状況を理解し、あくまでこちらの論理ではなく、クレームをつけた方の立場を考え、処理にあたった。アップル・サポセンの理不尽な対応が反面教師となっていたことは言うまでもない。

最初は相手もかなり憤っていたけれど、ていねいに対応し、ごくおだやかに話し合いは行われ、こちらの件はついさきほど一件落着し安堵した。それはクレームをつけた相手、この件についての関係者と僕との基本的な信頼関係が当初からあったことによると思う。JUSTICEに次いで人間にとって大切なものはTRUSTではないか、と思う次第。

さて、「決戦の月曜日」、昨日の真夏日と比べ本日はクールダウン、あくまでクールに紳士的に戦おうと決意した日にふさわしい。午前8時に起床、斎戒沐浴し(シャワーを浴びただけですが)、別件逆クレーム問題の処理連絡をいったん終え、親愛なるマイミクのみなさんの応援メッセージを読むことで士気を高め、煙草が切れそうになっていたので、近所のコンビニまで新しいパックを買いに行き、子機のない僕の旧式のファクス電話をいつも置いている電話代からデスク中央に設置、先々週日曜夜に発生したトラブルから現在に至るiMacG5関連、修理報告書、サポセン通信関連、アップルとのメール連絡関連、等の書類を脇に置き、メモ用紙とボールペンを中央にセット、時間確認のため腕時計をはめ、おっと忘れるところだった買ってきた煙草とライターと灰皿をそばに置き、長期戦に備え、アイスコーヒーをなみなみ注いだグラスも手元に置き、電話機のプッシュボタンを押したのがちょうど午後1時だった。

受話器から聞こえてくるのは、もう慣れ親しんだ(いや、親しんではいないな)「ただいま回線が大変混み合っております、今しばらくお待ちください」の音声、それに続くTake Fiveの旋律、今回はTake Fiveの旋律に合わせ身体を揺らすくらい気持ちの余裕があった。妻はそばでサンドイッチを用意してくれている。何時間でも待つことができそうだった。むしろそうなれば、この理不尽なサポート体制の不備を更に突くことができ、いくらでも待ってやるかんな! という意気込みであった。

グラスのアイスコーヒーを一口すすったところ、あっけなく担当が出た。ものの5分、ホントにTake Five、拍子抜けであった。敵は僕の心理状態を見透かした上、こういう作戦をとったのだろうか。侮れない。しかし、これは最初のサポセン担当、僕の本日の敵は「強力クレーム処理班」だ。君には用はない。

事情を説明すると、「担当部署にお繋ぎします」と。で、Take Five。ここからまた待たされるんだな、と思っていたら、今度もきっかり5分ほどで「担当部署」からの担当氏が電話口に出てきた。アップルではTake Fiveにあわせて、仮にすぐ出られるようであっても最低5分は待たせる「規約」があるのかもしれない。

「カスタマーリレーションの○○と申します」と男は言った。クレーム処理上層部「強力クレーム処理班」は「カスタマーリレーション」という名称の部署であった。担当男性は、日曜日の「蛙にしょんべん女」と違って、やや早口の滑舌の悪い、しかし、なんだか友達になれそうな人の良さそうなトーンの声質、話し方だった。少し安心した。

「あの、お客様のご要望の、あの無償修理については、あの、伺っておりますが、あの、もう一度、あの、状況をですね、確認させていただきたい、と思うのですが」となんだか朴訥にしゃべるお人であった。これはこれで強力なのとあたったな、と脳裏で。蛙女はツンケンだったから戦意が高揚したが、この人の良さそうな声質、話し方の相手には戦意が消失してしまう。敵も手を変え、品を変え、いろいろな人材を用意しているようだ。ここはまあ、さすがアップルというか。 

「…というわけで、最初のサポセン担当の方に、私のパソコンの故障修理はリペアエクステンションプログラムの対象になる可能性が高いが、不具合の原因が他にあり、もし有償修理になった場合はどうするかと聞かれ、とにかく修理が必要なのは確かだし、一日でも早くパソコンが必要なので、その場合は有償修理でかまわないが、とにかく連絡をしてくれとお願いしたわけです。それはそうでしょう、有償修理なのか無償修理なのか曖昧なまま修理に出して、見積もりも提示されず修理されて戻ってきて、有償修理代金を請求されるのはおかしな話しで。それについて担当の方は了解し、その場合はそちらから連絡するということで決着したわけです」

つっこまれる要素のある論理的に破綻している部分はないと思う。ごくまっとうな論理だ。こんなことを何度もアップル担当に説明していると、現代において周知の事実として認識され、誰ひとりその事実に対し疑問をいだかなくなった、地球は丸いということを、ガリレオ時代の相手に説得している気分になる。

「そしてアップルからの最初の確認メールが届き、そこに『お申し込みいただいたサービスは保証修理の対象となることが確認されたため、修理料金は無料となります』と書いてありました。(用意していたアップルからのメールのコピーを読み上げた)私はもちろんこの故障がリペアエクステンションプログラムに該当し、無償修理になればという希望を持っていましたから、このメールの内容を読んでほっとしました。続いてそのメールには『修理サービスに関して確認が必要となった場合は、電話または電子メールにてご連絡させて頂きます』とありました。有償修理になる可能性もやはりあるんだな、とも思ったわけです」

「あ、あの、その『修理サービスに関して確認が必要となった場合』というのはですね、リペアエクステンションプログラムの修理サービスの確認、という意味でしてね、その他の、お客様の場合、リペアエクステンションプログラムの対象以外の修理サービスの確認、という意味では、あの、ないのでして」と朴訥担当が言った。何を言ってるのかわからなかった。

「え? どういうことですか? このメールにはどこにもリペアエクステンションなんて言葉は出てきてないですよ。『修理サービスに関して確認が必要となった場合は、電話または電子メールにてご連絡させて頂きます』という文面は、これまでの経緯から、有償修理になる場合は確認するためそちらから連絡する、としか取れないじゃないですか」

「え、ま、そうなんですけど、この場合は、あくまでリペアエクステンションプログラムに関する修理サービスについては、ということなんで、ええ、それについては今回、リペアエクステンションプログラムの対象となる電源ユニットを交換することで、まあ、確認の必要がなかった、と、そういうことで、ですね、有償修理サービスとなった場合の確認という意味ではなくて、ですね」と朴訥担当はぼそぼそとわけのわからないことを話し、こいつは今までのサポセンよりましかもと期待していたが、まったく同レベルであった。

「まあ、とにかくその後、何の連絡もなく、次のメールには『お客様の修理が完了しましたので、iMacG5を発送しました。お手元に届くまで2営業日ほどお待ちください』とだけの文面。100人の人が100人とも『ああ、故障は修理されて戻ってくるんだ』と思うでしょう」と僕は言った。「そして、修理されて戻ってきて、箱を開け、セッティングし、電源ボタンを押したら症状はそのまま、ですよ。修理報告書を読んだら、ブラックアウトで起動しない症状を確認したが、リペアエクステンションプログラムに該当しない部品の不良によるため、有償となるので修理せず返却した、修理が必要な場合は再度手続きを取れとある、こんなリペアの対処の仕方はおかしい、と思うのが普通でしょう?」

「え、まあ、今回の修理は、あくまでリペアエクステンションに該当した場合の修理、と、いうことでして、確かにご連絡を差し上げずに再送したことはですね、申し訳ない、と思っておるのですが」と朴訥担当。

「その申し訳ないというのは何度も聞かされてきたのですが、連絡を頂けなかったために、無償修理だと思っていたことが有償になり、具体的な不具合部分も見積もり記載されていないまま、もう一度修理依頼をし、さらに一週間程度修理されるまで待て、ということに納得がいかないわけです。私はパソコンを必要とする仕事をしています。土曜日にパソコンが直って来るものと確信して、仕事の計画を立てました。さらに1週間以上、修理の時間が必要になることによって私の仕事上の損失ということはどう補われるのですか。また、これまでに何時間もこうして担当の方々と話しもし、長い間待たされもしました。あまりにも納得がいかないことが多く、この際、時間がかかることは覚悟した上、今回の修理を無償にしていただきたい、と言っているわけです」と僕はこれも何度も言ってきたことを朴訥男に伝えた。

「え、あの、アップルの規約上(出た!「規約」)、当社のパソコンの不具合によって起きたビジネス上の損失については、保証できない、というのが、ですね、ありまして」と朴訥担当。

「その規約というのはアップルの立場からの規約でしょう。またその場合のパソコンの不具合によって起きたビジネス上の損失というのは、故障したときに起きたビジネス上の損失ということで、私が今回言っている仕事上の損失というのは、アップルが寄こすと約束した連絡を怠ったために生じたものでそれには該当しないんじゃないですか」。僕の言ってることにおかしなことはないという確信があった。

「アップルの規約はいいとして、あなたはこれについてどう思いますか? ○○さん」と僕は朴訥男に聞いてみた。「え、それは、個人としてはですね、まあ、言えません。あくまでアップルの立場として、え、ご相談を承っているんで」と朴訥男は言い、「あの、これについて別のご提案をさせていただきたいのですが」と言った。

「提案? それはどういう」、「はい、あのですね、アップルストアのクーポン券というのがありましてね、あの、3割引の。1万円の商品だったら3千円引き、2万だったら2千円、3万円で3千円引き、という、あのその3つの中からどれかひとつお選びできるという、あ、有償修理代金には、とても、あの、及ばない額だと思いますが」。ゴネる客には何かしらの実利をという単純な「ご提案」、戦法だった。冗談じゃない。

「いや、それはけっこうです。あくまで私の希望は無償修理です。連絡をくれなかったことについてそちらの責任であることを認めた以上、その責任について誠意を示し、形のあるものにするのが企業というものでしょう」と、これも日曜日、蛙女に言ったことを僕は言った。

それに対し、朴訥担当は「それは、あの、お客様のアップルへの思い違いかと」と、ここだけは少し強い口調で言った。つまりアップルは僕が思っているような誠意あるまともな企業ではない、ということだろうか。アップルは革新的で自由で反体制で、まあ、「ロック」な企業だとイメージがある。それは違うと朴訥担当は言ったのだ。それは理解できる。本当に革新的で自由で反体制で「ロック」な企業だったらすぐ潰れる。ある面、ビートルズの「アップル」がそうだったかもしれない。で、すぐ潰れたわけで。

ここまで朴訥担当との会話はおよそ30分、結局折り合わず、もう一度検討してみたいから時間をくれ、再度今日中に連絡をするということになった。午後1時40分にハングアップ。アップルからの連絡は午後6時少し前にあり、申し訳ないがまだ検討中であると。明日お昼までには結果連絡すると。「まだ検討中というのは、この件について結論が出せる立場の方がいないからかのか、明日連絡ができるということは結論が出せる立場の方と連絡が取れるからなのか」と聞いた。「まあ、そういうことです」と少し笑いを含んだような声で答えた。その笑いを含んだ声のトーンが意味することは、今はわからない。じゃんじゃん。


「連載大河小説・仁義なきアップルサポセンとの戦い」、まだ続きます。たぶん次回が最終回。まあ、ここまで長引くとは僕も予想外でした。明日には(既に今日)いくらなんでも決着するでしょう。これを書くのに4時間、何をやってるんだか…、明日に備えてもう寝ます。

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